NHKスペシャル「廃 炉」 広瀬隆

  2014年4月20日放映のNHK スペシャル「廃炉」は、全体とし ては、福島第一原発 事故がもたらした、 かなり絶望的な現状を掘り起こそうとしているように感じた人が多かったと思うが、実は、大きな間違いが多々含まれていて、視聴者がこれが「廃炉の現実」だ と信用しないよう望む。

 第一は、溶け落ちた核燃料デブリを取り出すために、格納容器に冠水する(水を一杯に入れる)と、原子炉圧力容器と違って、薄い 鋼鉄製の格納容器は、その水の重量(水圧)に耐えられない。さらに、大地震と事故時の爆発などによって、調べることができない格 納容器の損傷も金属の内部に潜んでいるので、冠水が格納容器の大 破壊を誘発するおそれが大きい。特に今後、小さな地震でも破壊して、一層の大事故を起こす危険性が大きいので、冠水は絶対にして はな らない。結論として、福島第一原発の廃炉は、現在進めている対策技術では(永遠に)不可能である。つまり冠水を前提とした現在の廃炉の工程表そのものが、 絵に描いた餅である。

 第二は、福 島県沖の魚介類の汚染度が安全な数値まで低くなっているという大きな嘘が語られ、ス リーマイル島原発事故では、大量の放射能が放出されたにもかかわらず、ほとんど放出されなかった、と放射能に関してデタラメを 言っていた。

 第三は、福 島第一原発の汚染地下水の漏洩防止対策として、凍土壁が語られていた が、極低温の凍土壁をつくると、周囲との温度差が大きいため、長期的に周囲の地層が変形して、原発の土台に大変な異常を起こすお それがあることが、まったく無視されている。短期間の調査で「異変がない」という現在の技術論はまったく当てにならない。凍土壁はドイ ツで失敗しているので、危険な方法であり、放棄すべきである(→『原発処分先進国ドイツの現実』(五月書房、2014年4月発 刊)を参照されたい)。

 第四は、日立製作所、東芝、三菱重工業が、福島第一原発事故の数十年にわたる長期間の廃炉作業で、莫大な国民の税金を食い、大 量の「電力」エネルギーを浪費して、企業利益をあげていることが、まったく指摘されていない。事故を起こした責任者は彼らであ る。彼らの未熟さと傲慢さが、事故を起こした。その集団が最大のもうけを得ていることは、許しがたい。彼らのとっている対策が、 番組全体のトーンとし て、ロボット開発などの 「英雄的行為」にすり替えられ(讃美され)ている。彼らが、本来は自費で事 故処理をしなければならないことは、加害者として当然の責務であるのに、これが讃美されるのでは、偽善のかたまりだ。

 以上が、福島第一原発事故の廃炉の実態である。)


動画

NHKスペシャル シリーズ 廃炉への道 第1回 2014.4.20
「放射能"封じ込め" 果てしなき闘い」(前半)

廃炉への道(1)「放射能"封じ込め" 果てしなき... 投稿者 tvpickup

(後半)
廃炉への道(1)「放射能"封じ込め" 果てしなき... 投稿者 tvpickup



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